yumekago

今日という日の先に

私は悩んでいた。

かれこれ半月ほど前から、答えの出ない問題に悩まされていた。
いくら眉間に皺を寄せて思考を巡らせても、目を閉じて深く考え込んでみても、納得できる答えは一向に出てこなかった。

なまえ、何かあったか?」
「えっ」

不意に声をかけられて顔を上げれば、心配そうな様子でこちらを覗き込んでいる煉獄さんがいた。

「ずっと難しい顔をしているが⋯」

私を気遣うように眉を下げる煉獄さんに胸が高鳴る。
普段は鷹揚な人だけど、時折垣間見せるこちらの些細な表情や言葉を汲み取って心を配る緻密さに胸が温かくなって、好きだなぁと改めて実感する。

実感するが、そんな場合ではない。
久しぶりに会ったというのに、楽しくない顔をしているように見えてしまったなら大問題だ。

「違うんです!久しぶりに会えて、その⋯少し緊張を⋯」

それもあながち間違いではない。
ずっと想い続けてきて、ようやく念願叶ってお付き合いできたけれど、未だにこうして煉獄さんと過ごす時間が信じられなくて、煉獄さんの目が真っ直ぐに私を見ているだけで心臓が煩い。

私の言葉に、煉獄さんはしばしポカンとした顔をしていたが、言葉の意味を理解すると柔らかく微笑んだ。

「俺はなまえに会えて嬉しいぞ」
「わ、私も嬉しいです!」

身を乗り出すようにそう言えば、煉獄さんは楽しそうに笑う。
それにまた胸が高鳴って、やっぱり今抱えている問題について納得できる答えをちゃんと見つけようと改めて決意する。

束の間の逢瀬を楽しんで煉獄さんと別れた後、再び頭を抱える。

煉獄さんを好きだと実感するたびに、煉獄さんの喜ぶ顔が見たいと思うほどに、迷宮に入り込んだように出口が見えなくなる。
かつてないほど頭を捻ってみても、凡庸な頭では何も出てこない。

そして期限が目前に迫った頃、ついに私は一人で考えることを諦めた。

一人で頭を抱えたところで答えが出ないなら、人に聞いた方が早い。
解答を他人に丸投げにするという実に合理的な結論に達した私は、メモを懐にしまって意気揚々と家を出た。