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まちがいさがし 第8章

「実弥くん、遅くまでごめんなさい。時間大丈夫?」
「⋯あァ、明日も休みだから」
「えっ、じゃあ実弥泊まっていって!」
「えっ」
「そしたら明日もたくさん遊べるじゃん」

また突拍子もない誘いをする弥勒に、今日何度目になるかわからないため息が溢れる。
嬉しそうな顔でそう提案する弥勒には可哀想だけど、さすがにそれだけで引き止めるわけにはいかない。

「弥勒、我儘言わないの。実弥くんが困るでしょう」
「やだ!ね、実弥!いいよね?」
「俺は⋯」
「ごめんなさい、本当に無理しなくていいから」

弥勒を抑えながら実弥くんに気にするなと視線を送ったのに、実弥くんの言葉は思いもしないものだった。

「俺は、いいけど」
「えっ」
「やったァー!」

実弥くんの言葉に固まった私の手をすり抜けて、弥勒が実弥くんに飛びつく。

「じゃあ実弥は俺と一緒に寝よ!」
「寝る前にトイレ行っとけよォ」
「うん!」

望み通りの展開となってご機嫌の弥勒は素直にトイレに駆けて行き、リビングに実弥くんと二人取り残される。
気まずい空気が漂うその空間が耐え難く、無理やりに声を出した。

「あの、実弥くん⋯」
「⋯話したいことがある」
「っ」

感情を抑えたような静かな声に、口を噤む。

そうだよね。

知らない間に知らないところで勝手に子どもを産まれてたんだもん。
言いたいこともあるだろう。

叱責であっても罵倒であっても、勝手をした私にはそれを聞き届ける責任がある。

「⋯わかった」
「ん」

短く言葉を交わして、実弥くんは戻ってきた弥勒を抱えて弥勒の部屋に消えて行った。