まちがいさがし 第8章
「母ちゃん出たー」
「はーい」
「実弥その服ピッタリだね!」
「まぁ⋯な」
「⋯⋯⋯」
似たような格好をして並んでリビングに入ってくる二人はまるでマトリョーシカでも見ているかのようにそっくりで、改めて見ると本当によく似ている。
「もうすぐご飯できるから」
「やった!」
「テーブルの上片付けてくれる?」
「うん!」
実弥くんにも手伝わせて玩具を片付けると、座る場所がどうとかあれやこれやと要求してくる弥勒に二人して振り回されながら、ようやく食事が始まる。
弥勒がこんな風にはしゃいでいるのを見るのは本当に珍しくて、実弥くんを巻き込んだことを申し訳ないと思いつつ、つい笑いが溢れる。
「うめェ」
「うん!母ちゃんのご飯はうまいんだ」
なぜか偉そうな顔で威張る弥勒の頭を、実弥くんが笑いながらクシャクシャと撫でる。
それを嬉しそうに受け入れる弥勒にまた驚かされて、子どもらしいその顔に少し安堵する。
隣に並んで同じような表情と仕草で勢い良く箸をすすめる二人を見ていると、昔からそうであった親子のようだと思う。
「弥勒、野菜も食べなさい」
「うぇぇ⋯」
「弥勒、食え。でかくなりてェんだろォ」
「うん⋯」
なぜだろう、同じことを言っているはずなのに、実弥くんの言うことには素直に頷く。
ご飯を食べ終わってからもそれは変わらず。
ソファに寝転がって実弥くんに凭れ掛かりながらテレビを見ている弥勒に声をかける。
「弥勒、歯磨いて」
「えーまだァ⋯」
「早く磨かねェと虫歯になんぞォ」
「わかったよー⋯」
実弥くんの言葉に、弥勒は渋々立ち上がって洗面所へ行く。
と思いきや自分の歯ブラシを持って戻ってくると、ソファに座る実弥くんの膝に頭を乗せて寝転がる。
「実弥がやって」
「は⋯」
「はい、あーん」
そう言って大口を開ける弥勒に、実弥くんは「しょうがねェなァ」と言って歯を磨き始める。
遠い昔、小さい兄弟に同じようにしてあげていたんだろう、その手付きは慣れたもので弥勒も気持ちよさそうに目を閉じている。