まちがいさがし 第7章
それからは毎週末、弥勒の待つ公園に通った。
遊ぶ内容は毎回弥勒が指定してくる。
大人相手だと遠慮なく全力でぶつかれるのが嬉しいのか、ボール遊びに留まらず相撲やらプロレスやら色んなことをやらされた。
休憩する傍ら、時折なまえの話を聞くこともあったけれど、それ以上に弥勒自身の話を聞くようにした。
何より俺が知りたかった。
生まれたことすら知らなかった自分の子どもが、生まれてからの数年間をどう生きてきたのか、何を考えているのか。
好きなものや興味のあるもの、苦手なもの、怖いもの、何でも知りたかった。
空いた時間は取り戻せるものではないけれど、少しでも距離が埋まる手段があるのなら何でもしたかった。
「そういえば兄ちゃん名前は?」
毎週末に遊ぶようになって2ヶ月ほど経ったある日、しこたま遊んでジュース片手にベンチに座っていたら、不意に弥勒が聞いてきた。
その質問に、そう言えば名前を名乗っていなかったことを今更気が付く。
「実弥」
「へェー」
「兄弟いるの?」
「下に6人な」
「いいなァ」
「そうかァ?」
ベンチに座ってジュースを飲みながら、そんな他愛もない話をしていた時だった。
ーポツ
「ん?」
「あ」
不意に空から一粒滴が落ちてきた。
雨か、と思ったのとほとんど同時に空が一気に暗くなる。
ーザァァ
屋根の下に移動する間もなく、瞬く間にどんよりした分厚い雲から大量の雨が降ってきて激しい雨が地面を叩きつける。
「走るぞ!」
「えっ」
バケツをひっくり返したような勢いで降りかかる雨粒から逃げるように、弥勒を抱えて公園を飛び出すと雨宿りできそうな場所を探して走った。
公園の周りは住宅が多く、お誂え向きの場所が見当たらない。
少し走ってようやく見えてきたコンビニに駆け込むと、担いでいた弥勒を下ろした。
「大丈夫か?」
「うん。兄ちゃんこそずぶ濡れだけど」
「そのうち乾くだろ」
そう言って雑誌棚の前に並んで外を窺うが、一向に止む気配はない。
それどころか。
「⋯っ、へっくし!」
コンビニの強すぎるクーラーに背筋がぞくぞくしたと思ったら盛大にクシャミが出た。