yumekago

まちがいさがし 第7章

「弥勒」
「なに?」

目の前で呆気に取られた顔をしている弥勒に、自然と笑みが溢れる。
なまえによく似た瞳の色をした、俺と瓜二つのその顔をじっと眺めて再び名前を呼ぶ。

「弥勒」
「な、なんだよォ」

グリグリと頭を撫でられ困惑しながらも照れたように笑っている弥勒を抱きしめたい衝動に駆られたが、ぐっと我慢する。

事を急いてはただの不審者になりかねない。

「お前の母ちゃんに会いたい」
「えっ」

その言葉に弥勒が驚いたような顔をした後、じとーっと疑り深い視線を寄越してくる。
まるで天敵を見るかのような目だ。

「兄ちゃんも母ちゃん狙いかよー」
「兄ちゃんも、って何だ」
「みんな母ちゃんとデートしたいって言うんだもん」
「みんなって誰だ?」
「スーパーの兄ちゃんとか幼稚園の先生とか自治会?のおっちゃんとかよっちゃんのパパとか」

指折り数えながら、弥勒は実に不満気に唇を尖らせる。
名前が上がった全員を今すぐこの世から消し去りたいという殺意が込み上げるが、なんとか抑え込んだ。

弥勒は眉間に皺を寄せて剥れた顔をしていたが、パッと顔を上げて俺を見上げる。

「でもダメだ!よく知らない人は連れてきちゃダメって母ちゃんが」
「⋯よく知ってる人ならいいのか?」
「友達ならいいぞ!」
「友達?」
「俺の友達なら、連れてきていいって」
「よしわかった。友達になりゃいいんだな」

そう言うと弥勒は嬉しそうに笑って頷いた。