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虹色のナラタージュ 第1章

「もういいの」
「俺は良くない。俺はなまえが「天元」

言いかけた言葉を遮って、なまえが顔を上げる。
真っ直ぐに俺を見上げるなまえは、どこか寂しそうな色を浮かべながらも穏やかに微笑んでいて。

俺を見据えたまま、なまえがゆっくりと言葉を紡いだ。

「雛鶴さんたちはどうなるの?」
「っ⋯」
「天元には、もう守るべき人たちがいるでしょ?」
「⋯⋯それは、」
「それは、私じゃない」

その問いかけに言葉を詰まらせた俺を見ながら、なまえは腕を掴む俺の手に自分の手を添えてそっと解くと、行き場のなくなった俺の手に触れながら微笑んだ。

「⋯ねぇ、天元」

昔から変わらない、優しい声色が響く。

「お願い。天元は、奥さんを大事にしてあげて」

足元に視線を落としたまま、なまえの顔を見ることすらできない。

「守ってあげてね。天元はそれができる人だから」

そう言って俺の手を包む柔らかい手が解かれる。
ゆっくりと離れていくその温もりを追いかけるように、無意識になまえの手を掴んで引き寄せた。

「っ⋯」

痩せた身体を抱き締めて、その勢いのまま頬に手を添えて顔を持ち上げると唇を重ねた。

初めて触れた、温かくて柔らかいなまえの唇。

それを頭が理解した途端に心臓が激しく鼓動して、そこから全身に熱が広がっていくのがわかった。

ゆっくりと唇を離せば、目と鼻の先にいるなまえの瞳が潤んで戸惑いを浮かべているのが見える。
わずかに染まったその頬に、全身を巡る熱情が加速する。

「⋯天元、や「なまえ、お前が好きだ」

そう告げて再び唇を奪う。

なまえの気持ちを確かめてもないこんな行為、弟と変わらねぇじゃねーか。

そんなことが頭を過ぎるが、俺の腕に控えめに回されたなまえの手に気付いて雑念を振り払う。
なまえが触れさせてくれるなら、もう何でも良かった。

そのまま身体を抱き上げて床に下ろすと、なまえを組み伏せて帯を解き、生々しい傷跡が残る肌に手を滑らせた。
なまえは抵抗しなかった。

それでも、結果だけ言えばなまえを抱けなかった。

弟に強引に引き裂かれたなまえの秘部は触れるたびに痛みが走るようで、声も上げずに身体を強張らせて痛みに耐えるなまえをそれ以上見ていられなくて手を止めた。

「⋯悪ィ」
「どうして天元が謝るの?」

なまえを抱き締めたまま壁に背中を預けてそう告げれば、なまえはフッと笑って俺の腕に触れる。

「ありがとう、天元」

その言葉の意味はわからなかったけれど、体重を預けてきたなまえを抱き締める腕に力を込めた。

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