まちがいさがし 第1章
その人に初めて会ったのは高校1年の春だった。
「初めまして、今年から副担任になったみょうじなまえです」
教壇に立って緊張の滲んだ顔でぎこちなく微笑みながら挨拶をしたその人は、教師にしては幼く見えた。
「なまえせんせー!一緒にご飯食べよ!」
「ねーなまえちゃん聞いてよー」
「なまえ先生って彼氏いるの?」
さほど年の離れていない新任の教師は生徒の好奇心を大いに煽り、まるで友達のような気軽さで生徒に絡まれている姿をよく見かけた。
でも、それだけだった。
それだけの筈だった。
俺にとっては他の教師と変わらない。
特段関わることもなければ変に距離を取ることもない。
そもそも副担任なのだから、担任以上に接する機会なんてなかった。
何より俺は自分の生活を守るだけで精一杯で、周りを気にする余裕なんてなかった。