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まちがいさがし 第6章

案内されるがまま家に上がり、廊下を通って客間に通される。
一度お辞儀をして下がっていったその人は、少ししてからお盆を片手に再び部屋に現れた。

「粗茶ですが⋯」
「ありがとうございます、いただきます」

なまえの母親はお茶菓子とともに湯呑をテーブルに置き、お盆を下ろすと向かいに座った。
穏やかな相貌で微笑むその顔は、なまえと本当によく似ている。

自分の湯呑に口をつけた後、母親はゆっくりと口を開いた。

「娘に会いに来てくださったんでしょう?」
「はい。みょうじ先生は私のクラスの副担任でした」
「そうでしたか⋯。それで不死川さんも今は先生に?」
「はい。先生と出会っていなければ、選ばなかった職業です」
「そうですか⋯」

俺の言葉に、どこか淋しげな色を宿しながらも母親は嬉しそうに微笑んだ。

「あの子が教師として過ごした日々は、ちゃんと意味があったんですね⋯」

ポツリと呟かれた言葉に、嫌な予感が頭を横切る。

「あの、それで、先生は⋯?」
「それが⋯うちにはいないんです。せっかく来ていただいたのに⋯」
「⋯今どちらに?」
「わからないんです⋯」

思わず前のめりになって聞いた質問に、母親は悲しげな表情を浮かべてフルフルと首を振った。

なまえが実家にいないことは予想していたが、所在すらわからない状態であるとまでは思ってもいなかった。
家族仲は悪くなかったはずだ。

「あの子が突然教師を辞めて戻ってきたとき⋯主人が怒って追い出してしまって⋯」
「怒って?教師を辞めたことをですか?」
「いえ⋯その、なんと申しますか⋯」

食い下がって尋ねる俺に、母親は困ったように視線を彷徨わせながら言い淀む。

その様子に、ずっともしかしたらと頭の中にはあったけれど、あまりに都合が良すぎて排除しようとしていた言葉をぶつけた。

「ー⋯妊娠、していたからですか⋯?」

俺の言葉に、母親がビクリと身体を震わせて顔を上げた。
ゆっくりと視線を上げた母親と目が合う。

「ご存知でしたか⋯」

脱力したように肩を落とす母親に、何も言葉を返せず押し黙った。