まちがいさがし 第6章
駅までの道を早足で歩きながら、先日控えたメモを取り出す。
殴り書きされた文字は今日に至るまで何度も見返していて最早暗記していたけれど、それでも何か縋るものが欲しくてお守り代わりに持ち歩いていた。
最寄りの駅に着くと、切符を買って電車に乗り込む。
休日の早朝の電車内は人が疎らで、空いている座席に腰を下ろしたものの、落ち着かなくて再度立ち上がる。
数回移動を繰り返して、最終的に乗降口の脇にもたれかかるようにして立った。
時速数十キロで通り過ぎていく景色をぼんやりと眺めながら、脳内を巡るのは1つの可能性。
違うかもしれない。
でも、もしかしたら、万が一、そうだとしたら。
それはあまりに都合の良い結果で、期待するなと自分に繰り返し言い聞かせるが、わずかな可能性に縋り付いている自分がいるのも事実で。
出口のない迷路に迷い込んだように、そんなことを繰り返し考えていたらいつの間にか目的の町に着いていた。
駅を出て携帯のナビを見ながら控えたメモを片手に15分ほど歩いていたら、目的の家が見えてきた。
閑静な住宅街の一角にある一軒家。
鉄製の門の前まで来ると、緊張が走る。
何度か躊躇いながら、緊張で乾く喉を咳払いして落ち着かせると、ようやくチャイムを押す。
「はい」
数秒後にモニターから聞こえてきたのはどこか聞き覚えのある穏やかな声。
「突然すみません。キメツ学園で教師をしている不死川実弥と申します」
「えっ」
モニター越しに相手の驚きが伝わってくる。
その人は少し言葉に詰まった後、躊躇いながらも応える。
「⋯ちょっとお待ちくださいね」
「はい」
そう言うとモニターが切れ、数分待っていたら玄関がゆっくりと開いた。
「急に押しかけて申し訳ございません」
「いえ⋯、どうぞお上がりください」
柔らかな物腰で招き入れてくれた中年の女性は、なまえとよく似た笑顔を浮かべていた。