路地裏のキンモクセイ 第1章
「すごい人⋯」
「明日からお祭りだからね。準備とか前夜祭で、今日は家に居る人のほうが少ないだろうね」
夕刻の賑わいに明日から始まる感謝祭への熱気が加わり、町は騒々しいほどだった。
むせ返るような人混みの中で溺れそうになりながらも、なまえはどこか楽しそうな顔をしている。
「こーゆうの初めて?」
「はい。こんな賑やかなところも、人混みの熱さも初めて⋯。みんな、とても楽しそう」
町行く人を好奇心いっぱいの瞳で見ながら弾むように歩くなまえ。
「⋯今まで、あんまり外に出なかった?」
なまえの透き通るような白い肌に、カカシは不意にそう尋ねた。
その言葉になまえはカカシを一瞥し、力を抜いて微笑んだ。
「はい。だから、とても新鮮で⋯楽しいです」
「そっか⋯。じゃ、もっと賑やかなとこに行ってみよっか」
「もっと賑やかなとこ⋯?」
「そ」
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